日韓 青年・学生決意声明文

植民地主義は現在を生きる私自身の問題である

―「韓国強制併合」100年にあたって―

 今年2010年は、「韓国強制併合」100年にあたる年である。100年前、韓国は日本から主権を奪われ、日本は韓国から主権を強奪した。しかし、その時韓国が奪われたのは主権だけではない。日本は植民地支配を通して朝鮮人を人間として認めなかった。すなわち、朝鮮人が主体的に生きていく権利を否定し、数えきれないほど多くの生命と尊厳を奪ったのである。このような植民地支配の暴力性は、日本の侵略戦争のために朝鮮人を兵力および労働力、そして日本軍性奴隷として動員した事実に端的に現れている。また、韓国の文化と言語を抹殺する「皇国臣民化政策」を強行し、数多くの朝鮮人の精神と肉体を踏み躙り、一生拭い去ることのできない傷を残した。
 1945年、日本は敗戦したが日本の植民地主義は消えなかった。植民地支配の結果として朝鮮半島の南北分断と民族離散が作り出され、数多くの青年たちを軍事的対立の前線へ追いやっている。南北分断は戦争だけでなく不毛なイデオロギー対決へとつながり、社会分裂を助長している。日本は米国とともに分断体制に加担しそれを維持、強化してきた。
 また、日本政府は植民地支配の責任を明確に認めず、被害者の痛みを回復するための真摯な行動をしてこなかった。日本軍性奴隷被害者ハルモニたちは、925回を越えて毎週水曜集会を行ってきたが、日本政府は無視してきた。また、被害者の補償を要求する裁判はすべて棄却された。日本の学生たちは植民地主義イデオロギーが盛り込まれた教科書で勉強しており、日本社会において植民地支配に対する反省は希薄である。さらに、日本政府・日本社会は植民地支配のなかで生じた複合的な差別構造を再生産してきた。最近の高校授業無償化をめぐって、日本にある各種学校の認可を受けた外国人学校のなかで朝鮮学校だけが排除されるなど、在日朝鮮人の権利は一貫して抑圧されてきている。そして、日本社会では朝鮮民主主義人民共和国に対する偏見と差別意識が蔓延している。
 韓国社会で清算されずにいる親日派は社会の指導層となり軍事独裁が長い間持続した。これによって根深い社会構造的暴力が再生産され続け、その暴力は在日朝鮮人にまで及んでいる。この問題から目をそむけた韓国社会で学生たちは沈黙を学び、結果的にはその暴力を維持、強化してきた。このような暴力は今日日韓両国に住んでいる外国人に対する制度的、日常的差別へとつながっている。
 日韓両国社会が抱えている以上のような問題を通して、私たちは継続する植民地主義を皮膚で感じる。今、私たち青年が抵抗しなければならないのは過去の植民地主義だけでなく、より一層拡張し深化している現在の植民地主義、まさにそれである。日本政府の公式的な謝罪と正当な補償をまず実現しなければならないのはもちろんである。しかし、それだけで植民地支配が消えるのではない。私たちは今なお存在する植民地主義自体に反対する。植民地主義は私たちが知らない間に、私たちの生の至るところに侵入し、私たちの精神を支配している。よって、私たちは朝鮮半島と日本に深く根をおろした植民地主義をこれ以上放置することはできない。100年前の歴史が今日の私の歴史となったように、今努力を怠った歴史が後の世代にとってもう一度恥辱の歴史となるであろうことは明らかである。今この瞬間が、来たる次世代の反省すべき過去として記憶されないために、私たち日韓青年学生は次のように決意する。

  1. 私は学習権を行使し、学ぶ努力を惜しまない。
  2. 私は日本政府の真の反省と謝罪、被害者のための正当な補償を要求する。
  3. 私は歴史の真実を歪曲し美化する一切の行動に強力に抵抗する。
  4. 私は朝鮮民主主義人民共和国と日本で植民地支配に対する謝罪と補償を前提とした国交正常化を早期に実現することを要求する。
  5. 私は南北朝鮮間の対話を推進し分断状況を終結させることを要求する。
  6. 私は民族や理念の差異によるあらゆる差別と抑圧を拒否し、真の人権が尊重される社会を実現していく。
  7. 私は持続的な対話と交流を通して両国社会の信頼関係を構築する。
  8. 私は未来の歴史の主体として生まれ変わるために絶えず努力する。

 私たちはこのような要求と行動を通して植民地主義を清算し、新しい日韓間の出会いと平和な社会を構築していくことを決意する。

2010年8月29日
日韓 青年・学生 一同


決意声明文作成過程について

  1. 経緯

     2010年は「韓国強制併合」から100年目にあたる年です。植民地主義の清算と東アジアの平和を構築するために、2010年1月31日には「韓国強制併合100年共同行動」日本実行委員会が結成され、3月26日には韓国実行委員会が結成されました。そして、私たち青年・学生もまた、この問題に主体的に取り組んでいくために、日本と韓国の双方で青年学生委員会を組織し、宣言文の起草やフォーラムの運営に取り組むこととしました。

  2. 青年・学生実行委員会<なあがら>の結成と活動

     日本では、2010年6月13日に青年・学生実行委員会<なあがら>を結成しました。<なあがら>とは、朝鮮語で「前進せよ」「よくなれ」「(痛みが)治癒されよ」といった意味です。<なあがら>は、日本人、在日朝鮮人、韓国からの留学生など、日本社会を構成する多様な構成員から成り立っています。
     <なあがら>では、<なあがら>独自の宣言文である<青年・学生宣言>を作成し、これを日本社会で広める活動を行いました。また、植民地主義の問題に関心を持つ青年・学生の情報共有のためのネットワークとして、メーリングリストを作成しました。
     <なあがら>の作成した<青年・学生宣言>は、植民地支配を実際に経験していない青年・学生世代が、「植民地主義は現在を生きる私自身の問題である」ことを自覚し、それに反対していくことを訴えた宣言です。この宣言は、8月22日現在までに約250名の賛同者を得ました。また、メーリングリスト参加者は約100名となりました。

  3. 韓国青年学生フォーラム委員会との共同作業

     2010年6月27日に日本(東京)で開催された「第2回なあがら会議」に韓国側代表1名が参加をし、7月23日と24日に韓国(ソウル)で開催された「日韓共同青年学生ワークショップ」になあがら代表2名が参加をすることで、<日韓青年学生決意声明文>を作成しました。
     この<日韓青年学生決意声明文>は、<なあがら>の作成した<青年・学生宣言>と<韓国青年学生フォーラム委員会>の作成した<青年学生決意声明文案>を統合し、文章を一本化したものです。「植民地主義は現在を生きる私自身の問題である」という共通の問題意識のもと、日本社会と韓国社会の抱える植民地主義の問題を、それぞれ具体的に盛り込みました。そして、日本と朝鮮半島で継続する植民地主義に、ともに反対していくことを決意しました。


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